派遣スタッフは社会保険に入れる?きちんと知っておきたい「社会保険」のお話

2022/09/29更新
派遣で働きたいけど、派遣で働く場合でも社会保険に入れるの?と気になっている方も多いかもしれません。結論は、派遣スタッフとして働く場合も社会保険に加入できます(加入条件有)。今回は「社会保険」ってそもそも何?というところから、派遣スタッフとして働く場合に社会保険まわりで気をつけておきたいことなどをお伝えします!

1そもそも「社会保険」って何?派遣社員も入れるの?

社会保険とは簡単に言うと皆が安心して暮らせる社会をつくる仕組みです。

求人情報を見ていると、待遇・福利厚生の欄でよく見かける「社会保険完備」や「社保完備」といった文字。そもそも「社会保険」とは何でしょうか。

社会保険とは、健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の総称ですが、健康保険・厚生年金保険の二つを指し「社会保険」、雇用保険・労災保険を指し「労働保険」と言われる場合もあります。「病気になった」「仕事中に事故にあった」「失業した」など、生活の中で起こるさまざまなリスクに備え、加入者が保険料を出し合い、その中から必要な方にお金を支給することで皆が安心して暮らせる社会をつくる仕組みです。

社会保険に加入できるかどうかは、雇用形態で決まるのではなく、派遣スタッフとして働く方も条件を満たしていれば加入できます。次の段落では、健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険それぞれの保険で得られるもの・加入条件などについてお伝えしていきます。

2社会保険の種類とそれぞれの内容

社会保険は健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の5種類

社会保険には、健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の5種類があります。それぞれの保険で受けられる給付、保険料の支払い方、加入条件などは以下の通りです。

健康保険


ひと言で言うと・・・

加入者が安心して平等に医療サービスを受けられる仕組み。


▼受けられる給付(※一部)
●医療機関で診察・処置・投薬を受けた時の費用補助(療養の給付)
●高額な医療費がかかった際の費用補助(高額医療費)
●出産時に42万円を支給(出産一時金)
●出産のために欠勤し給与の支給が受けられない時の手当金(出産手当金)
など

▼保険料の支払い方
加入者と勤務先が半分ずつ保険料を負担します。保険料は加入者の給与額や保険料率によって異なります。勤務先が「協会けんぽ」に加入している場合、保険料率は都道府県によって異なり、勤務先が「組合健保」に加入している・設立している場合、保険料率は各組合ごとに定められています。

▼加入条件
健康保険が適用される事業所で働いている人

※派遣やパート・アルバイトの場合でも以下(1)(2)のいずれかに当てはまる場合は加入の義務があります。

(1)契約期間が2か月以上あり、契約で定めた1週間の労働時間と1ヵ月の労働日数が一般社員の4分の3以上であること
(2)以下5つの条件全てを満たす人
1.契約で定めた1週間の労働時間が20時間以上
2.2ヵ月を超える雇用の見込みがある
3.給与額が月8万8000円以上である
4.学生ではない
5.従業員数101人以上の企業に勤めている

●もう少し細かく・・・
多くの方にとって一番身近な保険と言えるのが「健康保険」です。というのも、病院に行く際は保険証を持参すると思いますが、保険証は健康保険に加入することでもらえるものです。日本は「国民皆保険制度」と言って、国民全員が何らかの医療保険に加入する制度を採用しています。健康保険は医療保険の一つで、企業に勤めている人が加入するものです。

健康保険に加入していると、加入者本人が医療機関にかかった際には、実際にかかった医療費の3割、小学校入学前、または70歳以上の加入者の扶養家族の場合は2割負担となります。また、労働者やその家族が亡くなった際や、ひと月のうちにかかった医療費が一定額を超えた場合に払い戻しを受けられる制度(高額医療費)などの制度もあり、加入者が平等に医療サービスを受けられる仕組みがあります。

厚生年金保険


ひと言で言うと・・・

働いて収入を得るのが難しくなったときに助けてくれる年金。


▼受けられる給付(※一部)
●65歳以降に老齢基礎年金に上乗せして支給される年金(老齢厚生年金)
●加入者が所定の障害をおった場合に支給される年金(障害厚生年金)
●加入者が亡くなった際にその家族が受け取れる年金(遺族厚生年金)
など

▼保険料の支払い方
加入者と勤務先が半分ずつ保険料を負担します。保険料は給与額によって異なります。算出方法は「標準報酬月額(原則4月~6月の報酬の平均額)×保険料÷2(加入者と勤務先が折半するため)」で求められ、保険料率は18.3%で固定されています。

▼加入条件
厚生年金保険が適用される事業所で働いている人

※派遣やパート・アルバイトの場合でも以下(1)(2)のいずれかに当てはまる場合は加入の義務があります。

(1)契約期間が2か月以上あり、契約で定めた1週間の労働時間と1ヵ月の労働日数が一般社員の4分の3以上であること
(2)以下5つの条件全てを満たす人
1.契約で定めた1週間の労働時間が20時間以上
2.2ヵ月を超える雇用の見込みがある
3.給与額が月8万8000円以上である
4.学生ではない
5.従業員数101人以上の企業に勤めている

●もう少し細かく・・・
高齢となって働けなくなった、何らかの病気やけがによって身体に障害が残った、加入者が亡くなり遺族の生活が困窮してしまったという時に、年金・障害年金・遺族年金によって加入者やその家族を支えてくれるのが厚生年金保険です。

「国民年金」は日本に住んでいる20歳~60歳未満の人は全て加入の義務があります。一方で、「厚生年金保険」は、適用されている事業で働く人に加入の義務がある保険です。厚生年金保険に加入している場合、国民年金に加入したことで得られる基礎年金に上乗せして年金が支給されるため、将来受け取る年金額を増やすことができます。

介護保険


ひと言で言うと・・・

介護を必要とする人が少ない負担で介護サービスを受けられる仕組み。


▼受けられる給付(※一部)
●訪問介護・入浴介護など自宅でサポートが受けられるサービス(居宅サービス)
●介護老人保健施設など施設でサポートが受けられるサービス(施設サービス)
●住み慣れた場所で暮らせるようサポートが受けられるサービス(地域密着型サービス)
など

▼保険料の支払い方
40歳~64歳までは、加入者と勤務先が半分ずつ保険料を負担します。保険料は給与額、介護保険料率によって異なります。算出方法は「標準報酬月額(原則4月~6月の報酬の平均額)×介護保険料率÷2(加入者と勤務先が折半するため)」で求められます。介護保険料率は勤務先が「協会けんぽ」に加入している場合は全国一律で1.79%、「組合健保」に加入・設立している場合は各組合ごとに介護保険料率が定められています。また、65歳以上の介護保険料は市区町村によって異なります。

▼加入条件
40歳以上の健康保険加入者全員

●もう少し細かく・・・
介護保険は、社会保険の中で最も新しい保険です。高齢化に伴い、要介護高齢者の増加・介護期間の長期化が進む中で、核家族化や介護する家族自身の高齢化などにより、現代の日本では要介護高齢者を家庭の中だけで支えるのが難しくなってきました。そこで2000年に創設されたのが「介護保険」です。近年では、介護により離職をする人が増加傾向にあることから、厚労省は介護をする家族を支援する取組にも力を入れています。

介護保険の加入者は「65歳以上の方(第1号被保険者)」と「40歳~64歳の方(第2号被保険者)」に区分され、介護保険の支給が受けられるのは基本的には「65歳以上の方(第1号被保険者)」です。

保険料は、40歳になる誕生日の前日から納付が始まり一生涯払い続けていく点が、他の保険とは異なる点で、支払い続けることで被保険者であり続けられます。第2号被保険者の期間(40歳~64歳まで)は健康保険料の一部として給与から介護保険料が天引きされますが、第1号被保険者(65歳以上)になると、年間の年金受給額によって支払い方法が変わります。具体的には、年間18万円以上の年金を受給している場合は年金から天引きに、年金受給額が年間18万円以下の場合や、年金の受給自体を65歳以降に繰り下げている場合は、役所やコンビニでの納付かまたは口座振替での支払いとなります。

雇用保険


ひと言で言うと・・・

失業・休業時の生活を支え、能力開発やキャリア形成を支援してくれる仕組み。


▼受けられる給付(※一部)
●失業してから次の仕事が見つかるまで受けられる給付(基本手当・失業給付)
●育児休業中に受けられる給付(育児休業給付金)
●介護で仕事を休んだ時に受けられる給付(介護休業給付金)
など

▼保険料の支払い方
加入者と勤務先が保険料を負担します。負担割合は加入者側の方が少なく設定されている点は、加入者と勤務先が半分ずつ折半して支払う健康保険・厚生年金保険・介護保険とは違います。保険料は、年収×保険料率によって算出されますが、保険料率は固定ではなく、雇用保険の受給者実績や積立金の状況を鑑みて設定されます。

▼加入条件
●契約で定めた1週間の労働時間が20時間以上
●31日以上の雇用見込みがあること

●もう少し細かく・・・
失業や育児、介護などにより収入が無くなった際の生活を支えてくれるのが「雇用保険」です。雇用保険は「強制保険制度」と言って、法令によって加入が義務付けられている保険で、加入条件を満たせば雇用形態に関係なく加入が必要です。

上に挙げた「基本手当」や「育児休業給付金」の他、能力開発やキャリア形成のための職業訓練や通学・通信講座受講時に費用の一部を支給する「教育訓練給付」なども雇用保険でまかなわれているものです。 基本手当(失業給付)、育児休業給付金などの給付を受けるためには、給付の種類によって「雇用保険に通算12ヵ月以上加入していなければならない」など条件が決まっています。

労災保険


ひと言で言うと・・・

仕事や通勤が原因でのケガ・病気の際に労働者やその家族の生活を支えてくれる仕組み。


▼受けられる給付(※一部)
●仕事や通勤が原因の病気・ケガに対する治療費の給付(療養(補償)給付)
●仕事や通勤が原因の病気・ケガで働けない時の生活補償(休業(補償)給付)
など

▼保険料の支払い方
保険料は勤務先が全額負担します。加入者による負担がない点は、半分または一部を加入者が負担する他の社会保険とは異なる点です。

▼加入条件
原則、雇用形態に関わらず従業員をひとりでも雇用している事業所で働いていること。

●もう少し細かく・・・
仕事中や通勤途中のケガ、仕事や通勤が原因で病気を患った場合に治療費の支給をしてくれたり、生活を支えてくれるのが労災保険です。仕事や通勤が原因で障害が残った場合や死に至ってしまった場合にも、加入者やその家族へ給付金が支払われます。

労災保険は、原則として従業員を一人でも雇用している企業において、強制的に加入の義務が発生する保険です。例外として、農林水産業では、事業主の意思や従業員の過半数の意思によって加入する・しないの決定が任されています。

給付を受けるためには、病気やケガが「労災」にあたると認定される必要があり、認定は労働基準監督署が行ないます。

3派遣で働く場合、「社会保険」について注意することは?

派遣で働く場合、「社会保険」について注意することは?

社会保険が完備されているかは、就業先ではなく派遣会社の待遇・福利厚生を確認!

ご紹介をしてきた通り、社会保険は安心して働くために大切な仕組みです。ご自身の収入だけで生計を立てている場合や、フルタイムで働きたい場合は、社会保険が完備されているかについて応募時に確認しておくことをおすすめします。

派遣で働く場合、派遣会社に雇用され、各派遣先で働くことになりますので、勤務先ではなく派遣会社で社会保険が完備されているかを確認する必要があります。エン派遣でお仕事をお探しの際は、派遣会社情報の「待遇・福利厚生」欄をご確認ください。

なお、派遣社員の方が社会保険に加入する場合、加入の手続きは派遣会社の方で進めてくれます。ブランクから久しぶりに復職する場合と、休職期間なく別の派遣会社へ移る場合とでは、退職時に受け取る必要があるもの・新しい派遣会社に提出しなければならないものが異なりますので、派遣会社の指示に従いましょう。

4派扶養内で働きたい場合は年収額に注意!

配偶者の扶養の範囲で働きたい!という方へ

社会保険は安心して働ける制度ではあるものの、労災保険を除く健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険に加入する場合は加入者も半分または一部保険料を負担する必要があり、その分手取りは減ってしまいます。

結婚していて配偶者の扶養の範囲内で働きたいという場合は、ご自身の年収を106万円以内に収めなければなりません。扶養控除については別のコラムで詳しくご紹介していますので、気になる方はそちらも併せてご確認ください!

▼詳しくはこちらをご確認ください。
2022年版/扶養控除・扶養内について簡単にわかる!年収130万の壁って何?

5退職時や入社時の社会保険の手続き

退職時や入社時の社会保険の手続きは、退職・入社する企業側で行なってくれます。派遣会社を変える場合も、社会保険の手続きは派遣会社の方で行なってくれます。

ただし、手続きするために必要な資料は、加入者本人が退職する会社から受け取り、新しく入社する企業に提出しなければなりません。また退職する会社に返却しなければならないものもありますので、ご注意ください!

退職時に受け取るもの

●雇用保険被保険者証
●年金手帳(※会社に提出し保管されていた場合)

※退職後すぐに働く予定がない場合は、上記に加え下記の書類も必要です。
●離職票(※退職後にすぐ働く予定がない場合)
●健康保険の資格喪失証明書


「雇用保険被保険者証」とは簡単に言うと雇用保険に加入していたことを証明する書類です。「年金手帳」に関しては入社時に会社に提出したまま、会社の方で保管されていることが多いので、提出している場合は返却をしてもらう必要があります。

退職後、すぐに働く予定はなく基本手当(失業給付)を受ける場合は、「離職票」を発行してもらう必要があります。会社によっては、退職者からの依頼が無ければ発行の手続きをしないところもありますので、確認が必要です。

退職時に返却するもの

●健康保険証

扶養家族がいる場合は、加入者本人だけでなく、扶養家族全員分の健康保険証を返却する必要があります。手元に保険証がない状態で医療機関を受診すると、医療費が全額自己負担になります。ただし、医療機関での領収書や医療明細書とともに後日申請することで、かかった医療費から自己負担額を差し引いた金額の還付を受けることもできます。申請する先は、退職後すぐに転職する方は、転職先企業が加盟する健康組合、国民健康保険に加入する方は市区町村の役所です。

転職先・新しい派遣会社に提出するもの

●雇用保険被保険者証
●年金手帳
●マイナンバー(扶養家族がいる場合は家族全員分のマイナンバー)

すぐに働かない場合は

退職後すぐに働く予定がない場合は、以下ふたつの手続きを自分自身で行う必要があります。

1.ハローワークへの基本手当(失業給付)の申請

基本手当(失業給付)の受給申請は、ハローワークで行ないます。申請の際には元の会社から受け取った「雇用保険被保険者証」「離職票」の他、身分証明書、マイナンバー、写真、本人名義の預金通帳、印鑑、ハローワークでもらえる求職申込書が必要です。
※持参物については、申請前に最新の情報を必ずご確認くいださい。

なお、基本手当の受給を受けるには、離職日以前の2年間のうち、雇用保険への加入期間が12ヵ月以上ある方が対象です。受給期間は基本的には、退職日の翌日から1年間です。退職後に速やかに手続きをするようにしましょう。

2.国民健康保険または任意継続被保険者制度の申し込み

日本は「国民皆保険制度」と言って国民全員が何らかの医療保険に加入する制度を採用しています。退職後、配偶者の扶養に入る場合はその手続きを、そうでない場合は国民健康保険への加入手続きをするか、任意継続被保険者制度への申し込みをする必要があります。

国民健康保険へ加入する場合は、退職日の翌日から2週間以内にお住まいの市区町村の役所で手続きをする必要があります。加入の際には、前の会社で発行してもらった「健康保険の資格喪失証明書」、マイナンバー、身分証明書が必要です。
※持参物については、申請前に最新の情報を必ずご確認くいださい。

国民健康保険に加入する以外に、前職で加入していた保険を継続することもできます(最長2年間)。加入するには、退職日以前に継続して2ヵ月以上の加入期間があること、退職日の翌日から20日以内に手続きする必要があります。健康保険の保険料の支払いは、在職時は加入者と勤務先が半分ずつ負担していますが、退職後は勤務先の負担分は加入者自身で支払います。ご自身に扶養家族がいる場合など、国民健康保険に加入するよりも任意継続被保険者制度を使用した方が保険料の総額が安くなることもありますので、事前に確認をしてみましょう。

関連するQ&Aで更に詳しくチェック!
・社会保険が重複してしまいそうな時はどうすればいい?
・副業をする場合、保険加入はどうなる?
・契約が終了したら保険証はどうなるの?
・3年弱の長期派遣を満了後、別の企業を1年未満で退職した場合は失業保険の対象外?

6最後に

いかがでしたでしょうか。社会保険は大事なものだという認識はあっても、詳しいところまでは把握していなかったという方も多いのではないかと思います。

全てを詳細に覚えておく必要はないとは思いますが、各保険がどんな時に助けてくれるかは抑えておくと、万が一の時に役立ちます。加入者自身が必要に応じて自分で受給申込みを行なわなければならないことも多く、知らなかったことで本来受けられたはずの給付が受けられないのはもったいないので、ご注意ください。

派遣社員として働く場合、所属する派遣会社を変える機会はあると思います。派遣会社を変える時には社会保険の手続きをする必要がある点は、ぜひ頭の片隅に置いておいてください。

この記事が役に立ったらシェアしよう!
会員登録がまだの方
会員登録をすると、プレゼントがもらえるキャンペーンへの参加や質問の投稿など、より便利にサイトを使うことができます。