- 通訳で多いお仕事の内容について教えてください。
- 通訳の形式としましては、大きく逐次通訳・同時通訳・ウィスパリング通訳の3つに分かれています。逐次通訳とは、話を区切りながら通訳していく形式。話が完了してから通訳をするので訳の正確さが求められます。同時通訳とは、話を聞くのとほぼ同時に訳していく形式になります。大きな会議などの場合には、会場に設置されたブースに入り、通訳者の音声がマイクを通して聴衆のイヤフォンに届くようになっています。通常は複数名で交替しながら行なうことが一般的です。そしてウィスパリング通訳。通訳を必要とする人間の近くにいて聞き手にささやく程度の声で話と同時に訳していく形式です。自分の声やその他の音が耳に入るので難易度が高くなります。企業の会議などではウィスパリング通訳をすることが多いです。
たとえば、テレビなどで来日した方のそばで通訳している方や企業の重要ミッションを担う人につく通訳は、通訳学校でのトレーニングに加え、実際の通訳現場で多くの経験を積んだ方がほとんどです。その他、特定の人につくのではなく、その企業のあらゆる部署の通訳ニーズに応えるポジション、「プール制通訳」などと呼ばれます。こちらも、様々な分野の知識が必要になるため、レベルは高めです。技術者につく場合はかなり専門的な知識を求められるケースもあります。
逆に、アテンド通訳というポジションであれば、展示会場での案内や受付、送迎サービスといったお客さまの会話や行動をサポートする仕事なので、難易度は低めです。帰国子女の方や大学などで英語を専攻してきたような英語を難なく理解できる方であれば、挑戦しやすいかと思います。余談ですがアテンド通訳は、通訳というよりは「英文事務」や「英語を使える接客」として募集がかかることも多いです。 - 通訳のお仕事の傾向について教えてください。
- 通訳全体の件数は、増えてはいない状況かと思います。通訳を必要とする大半の企業は外資系になるのですが、景気の影響等から外国人スタッフの来日が減る傾向にあり、そのため通訳を必要とするシーンが減っています。
とはいえ、医薬系とIT系業界の仕事は減り方が少ないかと思います。実際、通訳のお仕事の約6~7割がこれらの業界だと思います。メーカーやエンターテイメント系企業での通訳というポジションもあることにはありますが、割合は前者に比べて少なめです。医薬系とIT系業界での通訳の仕事が減っていない理由としては、外資系企業の割合が多いということと、日進月歩で技術が進むため、常に海外にある本社と日本との間でのやりとりが生まれるのです。ですから、医薬系とIT系業界での勤務経験をお持ちの方は、チャンスと言えるかもしれません。
また、最近では市場の変化によりインドなまりの英語や中国なまりの英語というようなノンネイティブの英語に慣れている方、というニーズも出てきました。 - 未経験の方がこのお仕事に就くには、どのような方法がありますか?
- 未経験の方は、アテンド通訳や英文事務の一部に通訳業務があるような仕事であれば就業のチャンスがあります。たとえば、英語が飛び交う社内での勤務やビジターのアテンド業務、展示会・イベントでの通訳といった仕事。まずは基本的な経験を積み、さらに通訳学校へ通うなどしてスキルを洗練させ、ウィスパリング通訳や同時通訳をするお仕事にレベルアップするということになるかと思います。
- どんなスキルがあると時給アップにつながりますか?
- 逐次通訳よりはウィスパリング・同時通訳が対応できると時給は高めになる傾向があります。時給とは直接関係ないかもしれませんが、英語が話せる事と、通訳が出来る事は同じではないので注意が必要です。たとえば帰国子女の方であっても我流ではなく通訳学校のトレーニングを受けている方は、やはり職場での評価も高いかと思います。また、過去に専門的な業界の知識や就業経験をお持ちの方(たとえば研究所や技術開発の現場)は、高めの時給でスタートすることが可能なケースもあります。通訳の仕事は、専門的な分野にまで踏み込むことが多いので、そもそもの仕組みなどを理解していないと伝えることも難しいもの。ですから、派遣先企業と同業界での経験はプラスになります。
- このお仕事に求められるのは、どんな人材ですか?
- 通訳という仕事は、サービス業です。ハイレベルな語学力を持つ専門職でありながら、通訳というサービスを提供するスタンスは必要です。語学スキルを高めたいという動機だけでは、難しい仕事なのではないかと思います。例えばビジネスシーンでの通訳であれば、付く方のビジネスの成功のお手伝い、とも言えるのではないでしょうか。聞く相手のために訳す、というスタンスが必要になります。プロフェッショナルな意識を持ちつつ、裏方に徹すること。そして通訳技術そのものの向上に加えて専門用語の勉強など、つねに勉強が必要な職種でもあるので、それを続けられる資質も必要かもしれません。