派遣スタッフ満足度の高い派遣会社が行っている 取り組みとは?
【2019年度「総合満足度」第1位パーソルテンプスタッフ編】

2020/07/21 UPDATE

当研究所で調査・発表した『派遣スタッフが選ぶ!派遣会社満足度ランキング2019』において、第1位に選ばれた派遣会社が「具体的にどのような取り組みをされているのか」を2回にわたって紹介しています。

今回は「総合満足度」第1位に選ばれたパーソルテンプスタッフ和田社長に、お話をお伺いしました。

「誠実」「感謝の気持ち」がキーワード

―― 「総合満足度」1位に選ばれた評価ポイントとしては、「担当者が親身になってくれるから」「担当者がよく話を聞いてくれるから」が上位に挙がりました。その要因として考えられることを教えてください。

今回ご評価いただけたのは、日々の努力の結果であると思っています。その前提には当社が掲げているキーワード『誠実』『感謝の気持ち』があります。


―― それぞれのキーワードにはどのような想いが込められているのでしょうか。また、象徴的な取り組みがありましたらぜひご紹介ください。

当社でいう『誠実』とは、「真摯に対応する」「約束を守る」「結果の良し悪しに関わらず、きちんとフィードバックをする」など、派遣スタッフの方々との接点ひとつひとつを大切にすることです。

取り組みの例としては対面での登録面談があります。
昨今の状況も影響し、派遣会社各社においてはオンライン登録が主流になりつつありますが、当社では、WEB上での情報登録に加え、オンライン・オフライン双方での面談を組み合わせた登録をご案内しています。

なぜなら当社は利便性だけではなく、満足いただくためのサービスを目指しているからです。
派遣で仕事を探している方々は派遣会社への登録がゴールではありません。まずは、就業決定すること。そして、希望に沿った働き方を実現し、安心してお仕事をしていただくことがゴールです。

当社が対面での登録面談に拘るのは、お一人おひとりのお話をお伺いし、ご自身では気づけなかったスキルや仕事に対する志向性などを一緒に理解したいから。その結果、よりマッチした仕事紹介ができると考えています。また、仕事開始後も何か迷いや不安があった際は「すぐにテンプに相談しよう」と思っていただける関係性を作ることを大事にしております。これが、当社としての『誠実』な対応だと思っています。

『感謝の気持ち』は当社の原点です。創業者である篠原が起業した当初は、辛く苦しい状況が続き「いつやめようか」と毎日思っていたそうです。その状況を乗り越えることができたのは、派遣スタッフからの「ありがとう」という言葉。「もう1日続けよう」「もう1週間続けよう」と前を向くことができたから、今の当社がある。

派遣スタッフの方々の一言が我々を元気づけてくれるエネルギーとなります。派遣スタッフみなさんへの『感謝の気持ち』を忘れてはいけない。この想いは創業以来、当社の原点として引き継がれ、私も大事にしています。

その『感謝の気持ち』を象徴している取り組みとして、「テンプの日(10月2日)」があります。


―― 10月2日がテンプの日なのですね。具体的にどのような取り組みなのでしょうか。

テンプの日は、派遣スタッフのみなさんに日頃の感謝を伝える日です。
当日は、当社から就業している派遣スタッフの方々へプレゼントを持って訪問しています。私も現場で営業していた時は担当している派遣スタッフの方々に手渡ししていました。当社から長期で就業いただいている方は、テンプの日を楽しみにしてくださっていることも。「今年は何ですか?」と質問いただくこともありました。このテンプの日を始めてから、かれこれ30年。今後もずっと続けていきたい取り組みです。




テンプの日が10月2日である由来は、10(テン)2(プ)の語呂合わせとのこと。
過去にはワイヤレスイヤホンやエチケットセットをプレゼント。
流行も加味して毎年異なるものを選んでいるそう。




「同一労働同一賃金」施行により、
派遣スタッフが受けられるサービスの幅が広がる

―― 次に、派遣業界全体に関してのお考えをお聞かせください。業界全体の満足度向上という観点では現状をどのように思われていますか?

全体的なサービス水準を上げていく必要があると思っています。
一方で派遣会社のサービスは各社さまざまで、派遣スタッフの希望条件も多岐にわたります。

そうした現状から均一のサービス向上を目指すのではなく、各派遣会社の特長を明確にし、磨いていくことが必要だと思います。派遣スタッフの方々に満足していただければ、派遣先企業にも満足していただくことができます。業界発展はその先にあると考えています。

また、4月1日からスタートした「同一労働同一賃金」で派遣スタッフの待遇に変化が生じています。これは業界のサービス水準向上に向けて大きな機会と捉えています。


―― 「同一労働同一賃金」で派遣スタッフの待遇に変化が生じているということですが、具体的にどのような点が変わったのでしょうか。

「同一労働同一賃金」は、様々な雇用形態の間での不合理な待遇差の改善を目指すことが目的です。

今までは、たとえ同じ業務に従事していても、雇用期間の有無や勤務日数・時間などによりフルタイム勤務の無期雇用者、いわゆる「正社員」とそれ以外の雇用形態との間で待遇の差が生まれてしまうことも少なくありませんでした。

これからは同一労働同一賃金により、正社員のみに適用されていたものが派遣スタッフにも適用されるケースが増えることになります。主には、通勤交通費、退職金、諸手当、休憩室などの利用設備といった待遇や福利厚生に関してです。

今回の同一労働同一賃金のように待遇改善をしていくことが、業界のサービス水準向上においての第一歩であると考えています。

そのうえで、安心して長く働ける環境を提供していくなど、ひとつひとつ価値を積み上げていくこと。結果的に派遣スタッフの満足度向上だけではなく派遣先からも評価いただくことができ、良いスパイラルが回っていくと思います。


―― 御社では待遇に関してどのような変更をされているのでしょうか。

当社では、『通勤交通費支給』『半日有給休暇制度』『慶弔休暇・見舞金制度』を導入しました。

『半日有給休暇制度』は、多くの派遣会社で導入ができていない現状がありました。理由としては、派遣の場合は就業先ごとに契約時間が異なり半休の時間計算が非常に煩雑になるためです。

当社も今まで有給休暇は「全日」のみでしたが、『半日有給休暇制度』は、『通勤交通費支給』とともに以前より派遣スタッフの方からのご要望が多く、この「同一労働同一賃金」のタイミングで導入に踏み切りました。

業界全体でみると、「同一労働同一賃金」にともなう派遣スタッフの待遇変更に関する内容詳細は各社ごとに異なりますが、派遣会社各社サービス向上に向けて取り組んでいます。

そのために大事なのは、単にサービスの幅を広げるのではなく、派遣スタッフが望んでいることを派遣会社がしっかりヒアリングすること。「同一労働同一賃金」というチャンスを活かせるように、派遣スタッフ一人ひとりのニーズを把握し、派遣という働き方に満足していただけるよう引き続き努力してまいります。


―― 最後に、派遣スタッフのみなさんへメッセージをお願いします。
就業機会の提供だけではなく、みなさんが「派遣での仕事を通じてより良い人生を送っていただくため」のお手伝いをしたいと思っています。

そのためには、みなさんとのコミュニケーションが大切だと考えています。
気兼ねなく、何でも当社の担当に相談してください。




Profile
和田孝雄(わだ・たかお)氏
パーソルテンプスタッフ株式会社 代表取締役社長
1991年、テンプスタッフ(現パーソルテンプスタッフ)入社。
副社長などを経て2016年から現職。親会社パーソルホールディングスの取締役副社長執行役員も兼務。



編集後記

『派遣スタッフが選ぶ!派遣会社満足度ランキング2019』において、第1位に選ばれた派遣会社2社それぞれが「具体的にどのような取り組みをされているのか」を2回にわたって紹介いたしました。

2社とも共通されていたのは「何よりもまずは派遣スタッフの満足度向上を目指すこと」。それが結果的に派遣先企業の満足度向上にも繋がり、業界全体を良くしていくことになるということ。

また、派遣スタッフみなさんのご意見がとても貴重だというお話もされていました。派遣の働き方をより良いものにしていくためには、みなさんのリアルな声が必要だということ。派遣で働く上での疑問や気になることがあれば、派遣会社の担当者にぜひ相談してみましょう。




執筆・編集:派遣の働き方研究所 研究員 鈴木志保