派遣スタッフ満足度の高い派遣会社が行っている 取り組みとは?
【2019年度「継続就業意向度」第1位リクルートスタッフィング編】

2020/04/07 UPDATE

本記事では、当研究所で調査・発表した『派遣スタッフが選ぶ!派遣会社満足度ランキング2019』において、第1位に選ばれた派遣会社が「具体的にどのような取り組みをされているのか」を2回にわたって紹介していきます。

まずは「継続就業意向度」第1位に選ばれたリクルートスタッフィング執行役員・三ツ井氏に、自社で実施している取り組みやスタンスに関してお話をお伺いしました。

「就業ふりかえり面談」で自分らしい働き方をサポート

―― 「継続就業意向度」1位に選ばれた評価ポイントとしては、「自分に合った派遣先が多そうだから」という『紹介される求人』に関する項目が上位に挙がりました。その要因として考えられることを教えてください。

まず、「継続就業意向度」で1位というご評価をいただき、派遣スタッフの皆さまに心から感謝申し上げます。当社よりご就業いただいている派遣スタッフの皆さまに、就業先で高いパフォーマンスを出していただいていることが、派遣先企業の方からの高いご評価につながり、当社に対して多くの求人依頼をしていただける要因だと考えています。

その結果として、派遣スタッフの方一人ひとりのご希望に合ったお仕事を紹介することができ、皆さまからのご評価につながっているのではないかと思っております。日々業務に取り組んでくださっている派遣スタッフの皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。


―― 派遣スタッフが就業先で高いパフォーマンスを発揮するために、御社で何か取り組みはされているのでしょうか。

当社では、派遣スタッフの方々に自分らしく働いていただくために、営業担当が行うコミュニケーションの価値を高めることをとても大切にしております。なぜなら、営業担当は派遣スタッフの方と向き合うことができ、多様な働き方をサポートできる重要な存在だからです。その営業担当のコミュニケーションの価値を向上させる1つの取組みとして、数年前から「就業ふりかえり面談」を実施しています。


―― 「就業ふりかえり面談」とは、具体的にはどのような取り組みなのでしょうか。

「就業ふりかえり面談」では、派遣スタッフの方との限られた面談時間の中で、今どうしたいかという短期的な視点だけではなく、今担当されている業務のふりかえりを行った上で、「この先、就業先でどのように活躍したいか」「将来歩みたいキャリア」を明確にし、次契約期間でのテーマを決め、中長期的な視点で派遣スタッフの方と向き合います。例えば、「一からひとりで資料を作成できるようになる」「〇〇レベルまでExcelスキルを身につける」など。業務内容やスキルに合わせてテーマを設定します。

次に、当社営業担当から派遣先に対して、派遣スタッフの方が考えていることやテーマを共有し、目標実現に向けて協力いただくように相談します。


―― 派遣先にご相談された場合、実際にご協力いただけるものなのでしょうか。

ご協力いただけるケースが多いです。実施してみて分かったのは、派遣先企業も派遣スタッフの方にもっと仕事をお願いしたい気持ちがある一方で、そんなこと言っていいのかという戸惑いがあったということです。当社営業担当から派遣先企業の方に対して派遣スタッフが思っていることを率直にお伝えすると、多くの方は協力的に動いてくださいます。

例えば、派遣スタッフの方から「これまでの仕事に慣れてきたので、こういう仕事にも挑戦してみたい」という話があり、派遣先に相談。こころよく仕事をまかせていただき、時給がアップしたという事例も。他にも派遣スタッフを正社員で登用する制度がなかった派遣先企業が、派遣スタッフの方が正社員になりたいという意欲を受け入れてくださり、正社員になれるルートを作っていただいたこともありました。

当社はビジョンとして「『らしさ』の数だけ、働き方がある社会」の実現を掲げています。「就業ふりかえり面談」も派遣スタッフ一人ひとりの『らしさ』を大事にしている取り組みのひとつ。これからも、「点」で寄り添うのではなく、目指すキャリアや働き方を一緒に考えながら「線」で寄り添っていくコミュニケーションをより磨いていきたいと思います。

大切なのは、迷ったら必ず派遣スタッフを選ぶという考え方

―― 次に、派遣業界全体に関してのお考えをお聞かせください。業界全体の満足度向上という観点では現状をどのように思われていますか?

現状、官民における多様な働き方の推進もあり、働く人が個人の事情に合わせた「働き方」を重要視して仕事を選ぶようになってきています。その点において派遣は非常に先進的な働き方だと考えており、派遣をポジティブに選んでいただける方をもっと増やしていきたいと思っています。

しかし、様々な雇用形態の中から派遣をポジティブに選んでいただける方を増やしていくためには、まだまだ課題があります。その中の一つは、派遣契約が3者間の契約だからこそ生まれる、派遣スタッフ、派遣先企業との関係性の質の問題です。関係性の質を上げていくために、われわれ派遣会社が介在できることは何かを常に考えています。


―― 派遣スタッフ、派遣先企業との関係性の質を上げるとは具体的にどういうことでしょうか。

前提として派遣スタッフと派遣先企業との関係性が悪いということではありません。派遣スタッフの方が就業していく中で、双方の思いに相違が生まれてくることがあり、結果的に関係性に問題が生じてくることもあるのです。

派遣会社が間に入ることでそのズレを明確にして解決していくことが、派遣スタッフと派遣先企業との関係性の質を上げることになると思います。

そのために大事なのは、派遣スタッフの皆さまが大切にしていることや考えていることを、派遣会社の担当がしっかりと把握することです。

例えば、キャリアアップをしたいと考えている方に関しては、まかせてもらえる仕事の幅を広げたり、より難易度が高い仕事に挑戦していくかを派遣会社が一緒に考えて、派遣先企業へ協力を仰いでいくこと。逆にキャリアアップよりも仕事とご自身の生活のバランスを大切にされている方には、「自分らしい働き方」ができるように手厚くサポートしていくことが必要だと考えています。

どんなときでも派遣スタッフの方の思いや考えを一番に大事にすること。派遣スタッフの方に満足していただくことが、派遣先企業の満足度向上にも繋がります。

当社には「スタッフ51:クライアント49」という創業から大切にしている考え方があるのですが、これは「私たちは、派遣スタッフ・派遣先企業の双方に対して徹底的に向き合うが、どうしてもどちらかだけを選ばなければならない時には、必ず派遣スタッフを選ぶ」という、当社全社員の行動規範となっているものです。

派遣会社の営業が、派遣スタッフの方の思いを知らずに「この仕事は派遣で対応可能です」と派遣先企業に働きかけたりニーズに寄り添ったりしていても、派遣スタッフの方が誰も求めていなければ、就業を生み出すことはできず派遣事業として成り立ちません。

当社としても派遣スタッフの方一人ひとりの『らしさ』を把握し、その『らしさ』の数だけ、働き方を提供できるように引き続き取り組んでまいります。


―― 最後に、派遣スタッフの皆さんへメッセージをお願いします。

派遣先企業も巻き込んで、皆さま一人ひとりにあったキャリア支援を行っていきたいと考えています。 ぜひ営業担当を頼っていただき、「将来どのような働き方をしていきたいか」を教えてください。「自分らしい働き方」の実現に向けて、一緒に頑張りましょう!


Profile
三ツ井 健(みつい・けん)氏
株式会社リクルートスタッフィング 執行役員
事業企画統括部 統括部長 兼 営業推進統括部 統括部長

2016年4月入社 前職の派遣会社で、営業部長、新規事業の立ち上げなどを経験し、リクルートスタッフィングへ。 営業組織のユニット長、事業推進部で全社戦略に携わった後、2019年4月より現職。










執筆・編集:派遣の働き方研究所 研究員 鈴木志保